
理工学研究科
山本 哲也さん
渡航先(国・機関)
ドイツ・ユーリッヒ研究センター (Forschungszentrum Juelich)
渡航期間
2024年9月29日~2024年11月5日
主な渡航目的
共同研究
渡航先決定理由
同分野の赤血球シミュレーションの専門家が所属しているため。
研究テーマ
シミュレーションを用いた物理学的な視点から赤血球の研究
私はシミュレーションを用い、物理学的な視点から赤血球の研究をしています。具体的には、血管を流れる赤血球をコンピュータの中で立体的に再現し、赤血球が運んできた酸素が流れの中でどのように広がっていくかについて調べています。本テーマに着手する以前は、同じくシミュレーションにより、赤血球を包む細胞膜が発する微小な揺らぎの性質や、赤血球が押し潰されたときの変形の仕方を研究していました。
研究テーマを選んだ背景
研究テーマを選んだのは、学部四年生のときにシミュレーション手法に関する論文を読んだことがきっかけです。その論文には、当該手法を用いてどのような物質が研究されてきたかが書かれており、その一つが赤血球でした。そこには赤血球が複雑に変形する様子を描いた図も掲載されており、それを目にしたときの「これは面白そうだ」という直観が研究の原点となりました。
研究を社会に活かすビジョン
私は、最終的には自分の研究を医学の発展に活かしたいと考えています。私の研究対象である赤血球は、細胞組織への酸素運搬という生理学的に重要な役割を担っています。一方で、種々の疾患により赤血球が変質してしまい、酸素運搬の機能が低下することが知られています。従って、健常・病変を問わず赤血球の性質を包括的に解明することで、そのような疾患に対する理解が深まると言えます。私の研究は、基礎研究としてその一端を担うものであると考えています。
海外活動によって得たもの、研究への影響、キャリア形成への影響
今回の海外活動における最大の収穫は、滞在先の教授と新しい研究テーマで共同研究に着手できたことです。これは、研究成果に直結するとともに、今後も長期的に共同研究を続けうる相手に巡り合えたということでもあります。また、キャリアの面においても、ポスドク(博士研究員)をはじめとした研究職をドイツ国内外で探しやすくなったと考えており、博士号取得後のキャリア形成にも繋がる活動になったのではないかと思います。
教育研究面で、海外活動を通じて気付いたこと
教育研究面で日本と大きく異なっていたのは、博士課程の学生が指導教員の研究予算で雇われているという点です。従って、給料が保証されていると同時に、日本より指導教員に対して責任を負っており、研究テーマも予算によってある程度制限されているという印象を受けました。また、働き方としては、教員も学生も朝に出勤して晩には帰宅するという形で、その点は日本の方が好きな時間に研究する文化が根強いのではないかと思います。もちろん、同じ日本とドイツの比較でも研究機関や分野によって色々と異なる点はあると思いますが、なんとなく話に聞いていたことではあったため、事前のイメージとのギャップはさほど大きくありませんでした。
語学面での準備
英語でのコミュニケーションにはある程度慣れており、ドイツ語は話せなくても研究するうえでは支障が無さそうだったため、特に準備していません。


生活面での準備
一般的なホテルに滞在すると宿泊費が嵩むため、研究所所有のゲストハウスに滞在できるよう、手配してもらいました。
海外活動に要した費用の概算
渡航費25万円、宿泊費10万円、その他食費など15万円
費用の拠出元・資金名
Keio-SPRING 挑戦的取組補助費/Assistance subsidies for pioneering initiatives
今後海外活動を予定している方へのメッセージ
どの国であっても、海外活動をすることで、自分がどのような環境で働けるのか・働きたいかが分かるのではないかと思います。例えば、私の知り合いには、海外で活動してみたものの、現地の食べ物がどうしても口に合わず、やはり日本にいたいと思うようになった、という方がいます。一方、私は一ヶ月以上、日本米を全く口にしなくても特に気にならず、これは自分にとっては新たな発見でした。食事以外でも言語や労働文化など、自分が日本に限らず適応できると分かればそれだけ将来の選択肢が増えますし、逆に日本が良いと思うようになれば、日本国内で活躍の場を積極的に見出すきっかけになると思います。海外という慣れない環境に身を置くことで、ご自身の海外活動が「自分を知る」良い機会になることを願っています。
