
研究テーマ
哺乳類大脳新皮質における層構造形成メカニズムの解明
ヒトが高度な思考や社会性といった機能を発揮するためには、大脳新皮質が正常に形成されることが重要である。この過程に異常が生じると、自閉症や統合失調症などの原因となる。大脳新皮質は神経細胞からなる特異な層構造をもち、その特徴はあらゆる哺乳類に共通している。このことから、進化的にも非常に重要な構造と考えられる。しかし、神経細胞が移動しながら秩序だった層構造を形成するメカニズムには未解明な点が多い。私の研究では、この層構造形成の仕組みを細胞・分子レベルで明らかにすることを目指している。
研究のきっかけ
小児科医として子どもたちの発達を見守る中で、次々に能力を獲得していく背景にある脳の形成過程に関心を持った。また、発達特性を持つ子どもたちをより深く理解するために、未知である大脳の基本構造の形成メカニズムを明らかにすることが重要であると考えた。
研究上の工夫等
私の研究では、マウス個体(in vivo)と培養系(in vitro)の実験を組み合わせ、それぞれで得られた結果を相互に検証する往復的なアプローチを行っている。これにより、結果の再現性と解釈の確かさを高める工夫をしている。とりわけ、所属研究室が独自に開発した子宮内胎仔電気穿孔法を用いて、個体内で発生時期依存的かつ神経細胞特異的に遺伝子機能を解析している点が本研究の特色である。

社会とのつながり
大脳の基本構造がどのように形作られるのかを明らかにすることで、発生異常に伴う神経疾患の病態理解や新規治療法の開発に貢献できると期待している。また、脳の進化過程の理解にも寄与すると考えている。
今後の展望(研究)
正常構造の形成過程を明らかにする基礎研究を進めるとともに、そこで得られた知見をもとに、難治性疾患の病態解明へとつなげていきたい。また、小児科医として、新たな治療法の開発や、それを患者さんに届ける取り組みにも関わっていきたい。
今後の展望(キャリア)
基礎研究と臨床の双方に取り組みながら、脳の発生機構の解明とその成果を臨床へとつなぐ研究者・医師を目指したい。
社会へのメッセージ
大脳新皮質の形成異常は、発達の遅れや自閉スペクトラム症、てんかんなどの神経疾患につながることが知られていますが、現在は症状を和らげる治療が中心です。本研究は、その仕組みを明らかにし、新たな治療につなげることを目指しています。