研究テーマ

金属3Dプリンタを用いたコーティングの表面特性分析

金属3Dプリンタの1種である指向性エネルギー堆積法(DED)は、母材へ向けて金属粉末を噴射すると同時にレーザを照射することで、吹き付けた金属を溶かし選択的に付加するため、効率的に密着性の高いコーティングが可能な技術として注目されています。しかし、加工条件が多いうえに、金属が溶けて固まる過程の熱履歴が硬度等の機械的性質や内部の割れ等の品質に複雑に影響するため、所望のコーティング層を造形するには多くの試行錯誤が必要となっています。そこで本研究ではDEDによるコーティングを対象に、加工条件に紐づく熱履歴および金属組織の変化を分析・定量的に関連付けることで、所望のコーティング層造形技術の開発を目指しています。

研究のきっかけ

研究のきっかけ

学部4年・修士ともに生産工学の研究室で金属3Dプリンタの研究をしていましたが、修士卒業後は研究内容とは関係のない企業の研究開発部で働いていました。それまでと異なる分野での仕事は学ぶことも多く楽しかったですが、一方で修士までの研究分野から離れたことで、ものづくりの根幹である生産工学や加工の研究の魅力を改めて感じたと同時に、もう一度学術的な研究がしたいと考えるようになりました。そこで、会社を辞めて博士課程に進学することを決意し、博士課程では修士で行っていたDEDの研究にもっと詳しく取り組みたいと思っていたので、研究室で取り組まれていたコーティングのプロセス分析をテーマとして進めることにしました。

研究上の工夫等

私の研究では、金属組織の分析やコーティング層の評価は実験で行い、実験での測定が難しい熱履歴の分析では伝熱シミュレーションを行っています。実験結果の評価は手間も時間がかかるうえにばらつきも多いため、結果の解釈・分析には時間がかかりますが、小さな変化や違和感をないがしろにせず分析・調査することでプロセスの理解を進めています。また、シミュレーションについては、実験の解釈に使用するという目的に基づいて、妥当性のある温度の再現と計算コストのバランスを考えて開発を進めています。

社会とのつながり

この研究で扱っている3Dプリンタは、様々な「もの」や「こと」の根幹である「ものづくり技術」の研究の一つです。この研究で、今まで作ることが難しかったパーツや製品の形状を3Dプリンタで実現するだけでなく、そのマテリアルデザインもできるようになれば、ものづくりの可能性を広げることで社会に還元できると考えています。

社会とのつながり

今後の展望(研究)

今後は、金属組織のシミュレーションにも取り組みたいと考え少しずつ実装を進めています。また、DEDを用いたものづくりの中でも3Dプリントやコーティングの後の切削加工にも取り組み、より実用的な技術として社会で普及することに貢献できればうれしいと考えています。

今後の展望(キャリア)

今後は研究者として、生産工学の分野の研究を続けたいと考えています。これまでの研究で、個人での試行錯誤だけでなく、他大学や企業の研究者、先生や後輩とのディスカッションを通じて知識と経験が積み重なっていくことにとても面白さを感じているので、引き続き興味のある分野を追求すると同時に、そのような研究の魅力を伝えられる人になれればと思っています。

社会へのメッセージ

社会へのメッセージ

私の研究では、3Dプリンタの中でも、樹脂ではなく金属を材料とする「金属3Dプリンタ」を研究対象としています。樹脂のプリンタのように広く普及しているものではなく、身近に感じることは少ないかもしれないですが、削って作るのが難しい金属部品の作製や、部品の補修やコーティングにも使うことができる新しい加工技術です。レーザ等で融点以上に一気に溶かして所望の場所への付加を積み重なるプロセスには、材料や伝熱工学だけでなく、流体力学、制御工学、レーザ工学等多くの分野が関わるため、一見難しそうに見えるところもありますが、実は多くの知識が学べるとても魅力的な技術だと思います。

後輩へのメッセージ

博士課程は、研究を含め多くのことを自分で計画・選択し、実行する試行錯誤の繰り返しを通して、研究遂行・課題解決能力を養うことができる環境であり、そのような経験はどのキャリアに進むにしてもて必ず役に立つ能力だと思います。一方で、もちろん研究に集中できることが博士課程の一番の意味だとは思いますが、自身の研究以外や後輩や同期から学ぶこともたくさんありますし、研究以外の余白から思いがけず得られるものも多いと思います。研究で忙しい中ではなかなか難しいときもあると思いますが(私も余裕がないことが多く偉そうなことは言えないですが)、研究や博士課程はあくまで自分の人生の一部だという広い視野を忘れずに、時間の許す限り研究に直接関係ない人やもの(SPRINGのイベント等)にも関わることが、結果的に自分にとっても研究にとってもよいと思います。